2020/08/21 3Dスキャン・リバースエンジニアリング
先日、福井県立武生高校理数科2年生の角井健悟君から我々にメールが届きました。
依頼内容はなんと!とんぼの翅の3Dスキャンが出来ないか?という内容でした。
「とんぼ?」と意表を突かれつつも、まずは高校に話を聞きに行きました。
※ 学校名、個人名、研究内容の掲載はご了解を頂いております。
角井君は中学生時代に何種類ものとんぼの翅の形を研究し、論文も発表している強者。
テーマ「どんな風でも発電できる風車… その秘密はブレードにあった!」にて学生科学賞(知事賞)を受賞!(んー、凄い!)
その時の風車の研究を高校生になった今でも、布目君、細野君という仲間と共に突き詰めている。
今までは顕微鏡で観察…つまり2Dデータで研究していたそうですが、最近は手詰まり状態・・・
研究内容に対する批評に対しても、2Dの研究では反論するのは難しい・・・
そこで、とんぼの翅を3Dデータ化し、研究を次のステージに進めようとアクションを起こしたそうです。
我々モビテックは角井君のお父さんがご存じだったようです。が、コンタクトは角井君が単独でとってきました。
先生に助けを求めるでもなく、一企業に直接コンタクトするその実行力とモチベーション!
その情熱に感化され、我々が持つスキャン技術でバックアップしようという事になりました。
とはいえ、とんぼの翅の3Dスキャンは容易ではありません。
薄いし、すぐに破れたり折れたり、翅表面の骨格(以下、翅脈)は細すぎるし、3Dスキャナのレーザー光が透けるし、ちょっとした風で飛んで行ってしまう・・・
弊社のATOS5を使用して3Dスキャンをしました。
破れないよう、傷つけないよう細心の注意を払いワークをセット。風で飛ばない工夫も追加し撮像です。
3Dスキャンしてみると、ある程度太い翅脈は再現できるものの、細かな翅脈が再現できません。
これでは良いデータとは言い難いです。
以前、電子コネクタ端子 薄板部品(t0.2程度)をCTスキャナで撮像した際、きれいなSTLデータが撮れたので今回もCTスキャナを試しました。
撮像中にX線光源をワークに限りなく近づけて撮像できるよう工夫し、翅脈まで再現できないかをトライです。
右の絵からも分かるように、翅脈はかろうじて見えますが、これでは3Dデータとして不成立と判断しました。
トンボの翅は我々の技術で撮れないのか・・・
いやいや!こんな事で諦めないのがモビテックです。負けず嫌いのエンジニアが集まり討議!
外部機関の設備を時間貸しでお借りして、我々で3Dスキャンしてみる事に!学生たちの情熱に応えねばなりません!
多くの企業様では自社保有の設備を基準に考え、出来うる範囲でアウトプットされるかと思います。
我々は違います。独自のネットワークを活用し、お客様が感動するアウトプットレベルにとことんこだわり抜きます。
画角はかなり小さくなりますが、更なる高解像度レンズを使用した3Dスキャナを試しました。
翅脈まで再現できていますが、まだまだ満足できません!
更なる高解像度レンズを試します。
こ、これは凄い!撮った我々もビックリ!
翅脈まできれいに再現できています。
すごすぎて本当に感動しました!
依頼は3Dデータ化ですが、ここまできたらトコトンです!
出力したSTLデータを使用して、弊社の高精細3Dプリンターで5倍にして造形しました。
これまた凄い!0.05mmピッチで造形し、翅脈も綺麗に再現出来ています。
この造形品を使えば、翅形状を直接測って研究できます。2Dよりも格段に研究し易いはず!
今回の件は、生物に見られる自然の設計を研究・模倣し、製品や技術に役立てようとする「バイオミメティクス設計」に該当します。
弊社では他にも同様の3Dスキャンを実施しています。その一部のSTL(ポリゴンデータ)をご紹介します。
バイオミメティクス設計は近年話題となっており、3Dスキャン、リバースエンジニアリングの需要が増えている分野です。
しかし、毎回思う事は「生物や小さいモノの3Dスキャンは本当に難しい!」。
「3Dスキャンしたけれど、良いデータが撮れなかった」と言われるお客様もおられます。
諦めてはいけません!是非、我々にご相談下さい。
最後になりましたが、本研究に微力ながらお力添えできた事は大変嬉しい限りです。
我々は角井君、布目君、細野君をこれからも応援していきます!頑張って下さい!