2020/10/29 3Dスキャン・リバースエンジニアリング
福岡大学 工学部 建築学科の田中照久先生より、建築部材に埋め込まれたコンクリート破壊の面形状を3Dスキャンで見れないか!?とご相談を受けました。
田中先生は、バーリングシアコネクタという機械的ずれ止めを用いた鋼とコンクリートの接合による建造物の耐震性・耐久性の向上を研究していらっしゃいます。
その中で、地震力を想定した多数回の繰返し力が作用した際の、バーリングシアコネクタ使用時におけるコンクリートの破壊性状を3Dスキャンで定量的に確認できないか?という背景で今回お話をいただきました。
今まで破壊面の状況は目視での観察のみで、スケッチ等で形状を確認していましたが、それでは限界とのことでした。。。
そこで田中先生は3Dスキャンに目を付け、弊社の技術者とコンタクトを取ったのです。
もともと弊社に福岡大学OBがおり、且つ田中先生と旧知の仲の人物がいたため今回のコラボレーションが実現しました。
我々としても3Dスキャンは幅広く活用できると思っていますので、微力ながら協力させていただく運びとなりました。
とはいえコンクリート破壊面の3Dスキャンは弊社としても初めてですので上手くいくか腕のためしどころです!
※ 学校名、個人名、研究内容の掲載はご了解を頂いております。
今回は弊社所有のATOS5にて撮像しました。
コンクリート破壊面の粉が落ちないように事前にエアーで粉は飛ばしております。
ターンテーブルの上にバーリングシアコネクタを固定し、基準となるマーカも設定し撮像です。
コンクリートの凹凸を綺麗に撮像するために、カメラの位置を3パターンにわけて撮像しています
凹凸の細部まで3Dスキャンすることができました。
撮像時に影になる部分や形状として認識しにくい部分は欠損となりますが、そこは後程手修正を入れます。
今回のワークは凹凸が激しく、3Dスキャンの光が影になって回り込まない微小な部分が多数発生しました(例えば、凹凸の凸形状の裏側の光が届かない影になる部分など)。
そういった箇所は一見スキャンできているように見えるのですが、光が間延びして影になる部分を映し出している現象があるので、一つ一つのポリゴンをチェックして、実際の形状なのかどうかを識別していきます。
一つ一つのポリゴンの状態を確認すれば大体分かりますが、凹凸形状が激しいワークはこの作業が一番大変です。
上手く3Dスキャンできていない所を見つけると、そのポリゴンをデータ上で消して、更に3Dスキャナのカメラとワークの角度を変えて再度撮像するを繰返してデータ品質を高めていきます。
通常、3Dスキャンだけなら割と短時間でできますが、今回はその後の編集に時間がかかりました。
つまり「使用したいデータ」にもってくるためには編集する技術力が必要ということですね。
我々モビテックは自動車業界で35年間培った技術力がありますので設計者目線での編集ができますので後工程に喜ばれる品質でアウトプットを出すことができるのです。
今回はコンクリートの凹凸をとある基準平面に対してどれだけ凸かor凹かを定量的に表現する必要があります。
ビジュアルで判断できるようにカラーマップで表現することが可能です。
この結果を持って田中先生へ報告いたしました。
今まで目視のみの判断だったのが定量的になることで考察の裏付けになると喜んでいただきました。
我々も本研究に微力ながらお力添えできた事は大変嬉しい限りです。
これからもデジタル技術を活用した研究に邁進する先生を応援しています。
最後は硬い握手を交わし、先生の研究の更なる発展を心からお祈りし記念撮影!