モビテック独自の強みを活かし、AI×ドメイン知識で新たな価値を創造する

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2022年から事業スタートした「データサイエンス」に注目!今回は、事業を推進するMさんに、事業化の背景やサービス内容、今後の展望についてお話いただきました。

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M.M.
モビリティ技術部
2012年入社/中途

2019年自主学習から始まり、2022年データサイエンス事業を設立へ

大学では土木系を専攻し、新卒で入社した会社ではため池の設計業務を担当していました。しかし、残業や休日出勤が多く、有給も取得しづらい環境だったため、家庭の時間を確保するのが難しくなり、転職を決意しました。そんな中、「建築・土木出身者歓迎」という言葉に惹かれ、モビテックの門をたたいたんです。2012年にモビテックへ転職し、入社後はしばらくトランスミッション(CVT)の信頼性評価を担当していました。

ワークライフバランスが改善されたことはもちろんですが、前職で培った調整力や折衝力が活かせるポジションだったため、大きなギャップを感じることなく、スムーズに経験を積むことができたように思います。

そして2019年ごろから、自己研鑚の一環としてプログラミングの学習を開始。まずはHP制作に必要な言語から習得し、思いのほか早く習得できたことで、その勢いのままPythonの学習を始めました。それがきっかけとなり、機械学習に興味を持つようになったんです。技術を学び、習得する中で、パワートレインの開発に活かせるものだと考え、顧客から機械学習関連の業務を受注し始めました。

年々実績を積み重ねる中で、昨今のAIブームも追い風となり、業務の受注が加速。2022年にデータサイエンス事業を立ち上げました。メンバー3名でスタートしましたが、2年が経ち、現在は9名体制に拡大。新入社員の直配属も予定しており、組織の成長を実感しています。

技術の遅れを取らないために。自由な時間を確保し、自己研鑽に充てる

データをビジネス的な価値へと変換することが、データサイエンティストの役割だと考えています。その手法は多岐にわたり、データサイエンス・データエンジニアリング・ビジネススキルといった幅広い知識が求められます。有益な価値を生み出すためには、これらすべての領域をバランスよく習得することが理想ですが、現実にはすべてを兼ね備えた人は多くありません。そのため、私たちは個々の強みを伸ばし、特定分野に特化したデータサイエンティストを育成するとともに、チーム全体の力を高めることを重視しています。

しかし、決まった業務に取り組むだけでは、急速に進化する技術に遅れを取ってしまう可能性があります。そこで、業務時間の約20%を自己研鑽に充てられるよう調整し、自由に学び、スキルを磨く時間を確保しています。その一環として、KaggleやSIGNATEといったデータ分析のコンペティションにも積極的に参加し、順位を競い合いながら学ぶことを推奨しています。私自身もこれまでに複数のメダルを獲得しました。

統計学や機械学習だけでは要因に辿り着けない。設計ノウハウの重要性

データサイエンティストの業務の根幹は、顧客の課題を聞き出し、最適な解決策を提供することにあります。当社では、顧客がデータを適切に解釈し、判断の決め手とできるよう、成果物の設計に力を入れています。具体的な事業としては、必要なデータを効率的に収集するRPAの開発、収集データの分析・解析を行うデータサイエンス、分析結果をもとにしたAIシステムの開発を担当しています。対応分野は、要因調査、異常検知、将来予測、時系列解析、画像認識など多岐にわたります。

事例として、「要因調査システム」についてご説明します。モノづくりの量産工程では、同じ図面から作られた製品が規定数生産され、ラインに流れてきます。ただ、完全に同じものばかりではなく「異常品」と呼ばれるものが混入することがあるんです。異常の要因は、刃具の摩耗だけでなく、多岐にわたります。これまでは、不具合が発生した際、関係者や有識者が集まり議論しながら原因を特定していました。しかし、各自の専門領域や経験則によるバイアスがかかることがあり、その範囲内に答えがない場合、正しい原因にたどり着けないことも。そこで、全影響因子の中からAIを活用して要因を特定するソリューションが「要因調査システム」です。

ただし、統計学や機械学習の知識だけで要因を特定できるものではなく、「構造物がどのような工程で作られるのか」「どの影響因子が異常品の発生につながるのか」といった設計ノウハウ(≒ドメイン知識)が不可欠です。当社のデータサイエンス事業の強みは、データサイエンス・データエンジニアリング・ビジネススキルの知識に加え、長年の自動車開発で培ったドメイン知識を活かし、アウトプットを提供できる点にあります。

また、当社では先行開発や研究も継続的に進めています。その一環として取り組んでいるのが「サロゲートモデル」です。設計現場では、検討中の形状が最適かどうかをCAE解析でシミュレーションしますが、大規模な解析には数週間を要することもあります。その間、検討がストップし、ボトルネックが生じてしまうんです。そこで、CAE解析のプロセスをAI化し、「開発期間の短縮」や「各パラメータの影響度の視覚化」を実現する取り組みを進めています。

では、「なぜ開発期間が短縮できるのか」というと、AIの特性として「インプットに対するアウトプットの速度が速い」ことが挙げられます。当社が取り組むサロゲートモデルでは、アウトプットの精度は6~7割として、現在の検討方向が「良い」のか「良くない」のかを瞬時に判断していきます。実際の設計現場でも、こうした傾向を把握するためにもシミュレーションを活用しますが、検討が数週間ストップすることはよくあります。だからこそ、サロゲートモデルを活用することで、この方向で進めてよいかを即座に判断でき、「開発期間の大幅な短縮」につながるわけなのです。

サロゲートモデルの他にも自社開発を進めていますので、サンプルとなる商材をつくり、顧客に提案する活動もしています。こうした自社開発に特化したデータサイエンティストたちは、ハイスペックなPCに囲まれて、研究に専念していますよ。

ドメイン知識×AIで新たな価値を創造。広がる可能性と未来

――最後に、チーム・事業としての展望をお聞かせください。

まず、チームとしては、自己研鑽の時間を確保し、各メンバーが興味を持った分野を学び、自主的に開発に取り組む文化を大切にしています。こうした主体的な挑戦から生まれたアイデアが、事業のビジョンと合致すれば、将来的にビジネス化する可能性も十分にあります。メンバーが自発的に動ける環境を整え、主体性を発揮できるチーム運営を心がけていきたいと考えています。

事業としては、これまでにご紹介したサービスに加え、AI実装教育にも力を入れています。今後は、より多くの企業にAIの可能性を届けることを目指し、支援の幅を広げていきたいと考えています。実際、「AIを活用したいが、何から始めればいいかわからない」という企業は、まだ多く存在します。そうした企業とスタートアップの段階から伴走し、共に成長できるビジネスパートナーになることを目指しています。すでに成功事例も生まれており、今後はこうした取り組みを、さらに発展させていきたいですね。

また、要因調査システムやサロゲートモデルを通してお伝えしたように、モノづくりの現場で培ったドメイン知識(設計ノウハウやCAE解析、NV(振動騒音)解析技術等)とAIを掛け合わせることで、他にはない価値を生み出せると確信しています。これからも、当社ならではの強みを最大限に活かし、顧客の課題解決に貢献していきたいです。

Profile

M.M.
モビリティ技術部
2012年入社/中途
大学では土木系を専攻。中途で入社し、トランスミッションの信頼性評価を担当する傍ら、2019年からデータサイエンスに関する知識・ノウハウを自主的に習得し、2022年に事業を立ち上げる。現在、データサイエンティストを率いて、事業を推進している。