【PROJECT STORY】EVバイクプロジェクト「世界最速へ続く軌跡 vol.2」

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<vol.2:2018~2019活動記録>モビテックEVバイク(EV-02A)がアメリカ ユタ州 ボンネビル・ソルトフラッツで開催された「ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアル2019」で世界最高速記録329km/h(204MPH)を樹立するまでの軌跡を紹介します。

Index

EVバイク(EV-02A)
FIM/AMA認定
世界最高記録樹立329km/h

― vol.1のおさらい ―

2011年に始動したEVバイクプロジェクト。2017年8月に2度目のBMSTに出場するも、荒れた路面を前に、車体が跳ねてしまい速度を伸ばすことはできなかった。フロントサスペンションを現地調達し、セッティングに奔走したものの、最後まで全開走行は叶わず——。
国内で最も長いコースは全長1.5kmのテストコースだが、その距離ではEV-01Zの実力が設計通りであるか検証が難しいため、BMST2017の1週間後、The COLORADO Mileへ出場し、電動バイククラスの最速記録303.2km/hを記録。本来のポテンシャルを発揮し記録を出すことができたが、目標はあくまでBMSTで世界最高速を樹立」すること。
ここからは、2018年からの取り組み、世界最速への軌跡を紹介する。

2011年~2017年のプロジェクトヒストリーについては、【PROJECT STORY】EVバイクプロジェクト「世界最速へ続く軌跡 vol.1」をご覧ください。また、社内プロジェクトの目的や背景、そして業務への展望についてはこちらの記事で紹介しています。

4年連続で海を航る。BMST2018に出場(2018)

「世界最速へ続く軌跡 vol.1」で記載した通り、2017年9月、The COLORADO Mileの電動バイククラスにおいて最速記録(303.2km/h)を残したが、目標はあくまでBMST
新たな課題である、荒れた路面でも全開走行を可能にすること、横揺れの課題を共に解決しなければならない。EV-01Zはコロラドで300km/hを出した際、EV-01と同様の横揺れも発生していた。社外の設計アドバイザーとして、元二輪設計者の塩原氏の意見を聞きながら、イチから設計を見直したEV-02の開発に乗り出した。低重心&ロングホイールベースの特異なディメンションであったEV-01から、市販車と同様のディメンションを参考にしたEV-02へと姿を変える。協力企業の協力と努力のお陰もあり、BMST2018を2ヶ月後に控えた時期に、NewマシンとなるEV-02は完成した。

2018年8月、国内の走行テストで上々の仕上がりを見せたEV-02が、期待を背負い、満を持してBMST2018に挑む。ところが、EV-02を待ち受けていたのは、300km/hという超高速走行時に発生した、横揺れがもたらした転倒というアクシデントであった。EV-01と同様の横揺れは、現地で試行錯誤しながら施した対策により、発生する速度レンジが上がり、揺れが増幅するという危険性を持ち合わせていた。ライダーの怪我と車両の故障により、レース2日目にして大会を後にすることとなった。

BMST初挑戦から5年、2019に向けて動き出す(2019①)

2018年11月、自信を持って送り込んだEV-02は、BMST2018を最悪の結果で終えることとなったが、ここで諦める訳にはいかない。BMST2019でのリベンジを誓い、EV-01の頃から引き摺っている横揺れの解決に向けて動き出す。但し、いつまでも挑戦を続けていくわけにもいかない。BMST初挑戦から5年目の節目となる次の挑戦を最後と決め、覚悟を持って挑む。
まずは、ライダー水谷氏の怪我が完治していないことと、体格の異なるライダーが操縦したときの挙動を確認したかったため、別のライダーの模索を始める。先ずは元ワークスライダーであり、数々の車両開発で実績のある難波氏にテスト走行をしていただけることとなる。更に、TRICK STAR RACING TEAMの監督であり、プロライダーでもある鶴田氏には、BMST2019での走行も見据えて協力していただけることにもなった。テスト走行は、難波氏を中心とした3名のライダーのコメントを聞きながら、また、BMST2019には水谷氏と鶴田氏の2名のライダーを要する体制で挑むことを前提とし、改良を進めた。そして、従来のFRP製ではなく、より軽量化したCFRP(ドライカーボン)製のカウルを纏い、横揺れ対策のため、足回りのセッティングを煮詰めたEV-02Aが完成する。忙しいスケジュールを割き、休日や早朝にも関わらず、テスト走行に付き合っていただいた難波氏からGOサインを頂き、BMST2019への出場を決意した。

最後の挑戦、4度目のレースに全てをかける(2019②)

2019年8月、MOBITEC EV-02A×ライダー鶴田氏×チーム監督水谷氏の体制でBMST2019に挑む。5年間、共に歩んできたライダー水谷氏は、怪我の回復具合からBMST2019ではライダーとしてではなく、チーム監督として帯同していただくこととなった。レース初日から3日目は、いくつかのトラブルに見舞われながらも、徐々に速度記録を伸ばしていった。3日目の走行では、ボンネビルの塩の路面では初めてとなる、制御的な制限範囲を使い切っての走行に到達した。その走行データをチェックし、制限範囲を引き上げた状態で、もう一度走行し、翌日の走行に備えて3日目を終了した。

レース4日目、制限範囲を限界まで引き上げて、記録更新に向けて勝負をかけた走行に挑む。コースコンディションは、路面状態も風も、BMST2019開幕以来、ベストな状態であった。AM7:58、1本目を走り終え記録は201.620mph(324.475km/h)、遂にEV-02Aがワールドレコードを超える記録を叩き出した。しかし、BMSTの正式記録は往路と復路の2本の平均速度であり、もう1本、復路でも同様の記録を出す必要がある。往路でレコードを超えると、一旦Impound(検査)エリアにてチェックを受ける。そして、2時間以内に復路を走り終えなければ、記録は失効となり、往路の走行からやり直すこととなる。この2時間のインターバルの間に、時間の許す限りバッテリを充電し、EV-02Aのパワーを充填する。バッテリ容量の90%以上充電が完了したところで、走行準備に取り掛かり、復路の走行に向かう。

AM9:48、最後の挑戦となる復路を走り終える。復路の記録は、207.430mph(333.825km/h)、往復平均では204.629mph(329.319km/h)となり、悲願のFIMが認定するワールドレコード樹立を勝ち取った。

遂に「世界最速の電動バイク」を造り上げることに成功(2019③)

プロジェクトが始動してから目標を達成するのに、8年もの年月を要することとなった。BMSTに5年連続で参戦を続けてきたが、輸送期間を除くと約8ヶ月という期間で課題と向き合い、車両開発や改良の検討、設計・制作・評価するのは、いつも時間との格闘であった。試作部品の供給・デザインの検討・車体設計のアドバイス・車両テストの協力など、協力企業や個人・研究機関の方など、様々な人の協力がなくては、継続することすら出来なかっただろう。システムや構造を考案・実用化し、車両に搭載することも「技術」であると思う。EVバイクプロジェクトの挑戦は、「技術」のカタチであるEV-02Aと、204.629mph(329.319km/h)というFIM認定のワールドレコード新記録樹立をもって、幕を下ろすこととなった。

———モビテックの挑戦は、これからも続いていく。

主な協力企業・研究機関一覧
本プロジェクトにおいて関係各社の皆様よりご協力を受け賜りましたこと、心より御礼申し上げます。

Profile

EVバイク(EV-02A)
FIM/AMA認定
世界最高記録樹立329km/h
「ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアル2019」にて、電動バイククラスの世界最速記録を樹立。エントリーした電動バイク車重300kg以上のクラスレコードを樹立するだけでなく、FIM/AMA(※)が認定する電動バイク全クラスのレコードを超える世界最速の電動バイクとなった。(※FIM:国際モーターサイクリズム連盟、AMA:全米モーターサイクル協会)

【車両スペック】
車体サイズ(全長×全幅×高さ):2360mm×689mm×1120mm
車体重量:338kg
外装:CFRP(ドライカーボン)
フレーム:パイプフレーム構造
     メインフレーム:炭素鋼鋼管(STKM11A)、スイングアーム:アルミ(7N01)
ホイール:アクティブ ゲイルスピード TYPE-GP
フロントフォーク:SUZUKI GSX1300R(オクムラチューニング)
リアショック:アクティブ ハイパープロ ツインショック
モータ:YASA-750(ブラシレス3相PMモータ)2基
モータコントローラ:SEVCON SIZE10 2基
バッテリ:リチウムイオン電池
(セル:日立マクセル、モジュール:マイクロ・ビークル・ラボ)