【PROJECT STORY】EVバイクプロジェクト「世界最速へ続く軌跡 vol.1」

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<vol.1:2011~2017活動記録>モビテックEVバイク(EV-02A)がアメリカ ユタ州 ボンネビル・ソルトフラッツで開催された「ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアル2019」で世界最高速記録329km/h(204MPH)を樹立するまでの軌跡を紹介します。

Index

EVバイク(EV-02A)
FIM/AMA認定
世界最高記録樹立329km/h

― PROJECT HISTORY ―

開発専門企業であるモビテックには、研修の他に培った技術を活かし、技術力向上・ノウハウ蓄積を目的としてモノづくりの場”社内プロジェクト”が複数存在します。社内プロジェクトの根源は当社エンジニアのアイデアであり、EVバイクプロジェクトも例外ではありません。
このプロジェクトは、将来普及が見込まれる電動モビリティの技術習得に向けた挑戦として2011年本格始動しました。
※社内プロジェクトの目的や背景、そして業務への展望についてお話しているインタビュー記事はこちらからご覧ください。

プロジェクト始動(2011-)

2011年7月、新しい技術への挑戦・技術の具現化を目的としたEVバイクプロジェクトがスタートする。
目指す舞台は、アメリカユタ州にある広大な塩の平原”ボンネビル ソルトフラッツ”で開催される「ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアル(※1)」。目標は”世界最高速”の樹立である。

(※1)ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアル:アメリカユタ州にある広大な塩の平原ボンネビル・ソルトフラッツで毎年8月に5日間の日程で開催される。5マイルの直線コースの中間にある1マイルの速度計測区間での平均速度を計測。往路・復路の2回走行し、その平均値が記録となる。

零号機EV-00~初号機EV-01誕生(2013-2014)

プロジェクト開始後、全体構想を検討。構想時期は、月2回時間を作り議論を重ねた。全体構想の後、零号機の検討を開始する。1年8カ月を経て2013年3月、ホンダNS-1をベースに零号機EV-00(コンバートEVバイク)が完成。
最高速競技向けの電動二輪車設計に向けた事前検証として、同月幸田サーキットYRP桐山にて社員を招き試乗会を実施。ここで得た知識・課題を基に、同年11月より初号機の構想へと移っていく。
翌2014年に入り、各主要部品の仕様検討、選定が本格化すると共に、搭載・フレーム詳細設計を開始する。そして、同年7月、様々な制約に対し、成立可能なレイアウトを確立し、年末にはデザインに移り、アイデアがカタチになる。
2015年に入りモータの製品初期トラブルなどの試行錯誤を繰り返し、すべてが初めての試みのなか、6月に初号機EV-01が誕生。BMST2015への出場に向けて、試走を経て、機材と共にアメリカへと発送する。

初号機EV-01海を航る、待ち受ける試練(2015)

2015年8月、レース本番を心待ちにしていた矢先、「天候不順によるコースコンディションの悪化が原因でレース開催は中止」の一報が入る。即座にボンネビルで行われる別の大会にエントリーできないかと調査・交渉を行ったところ、翌9月に開催予定の「Mike cook’s Bonneville Shootout」の出場権を得る。
ところが、レース前日に振った大雨の影響で、コースが再び湖と化してしまい、レース当日の朝、レース会場にてこの大会も中止を告げられる。レース会場で初披露したEV-01は、大会スタッフや他の参加者から称賛の声があがるも、結果は「記録なし」に終わる。

課題解決を繰り返しEV-01A完成。2度目の渡米、夢の舞台で初レースへ(2016)

2015年11月、EV-01は設計と製作に時間が掛かってしまい、満足に評価ができていなかった。そこで、設計上、空力性能を考慮していたものの、検証ができていないため、風洞試験と流体解析を実施し、カウル形状を見直す。また、実走テストの結果、車両が横揺れを起こす課題が発生し、ジャイロセンサを用いたデータ測定と対策案の検討、効果確認を繰り返す。こうして、新しいアッパーカウル形状のEV-01Aが2016年7月に完成した。

2016年8月、BMST2016に出場したEV-01Aはレース前日の車検を無事にパスし、初めてボンネビルの塩の路面を走行する。レース初日、緊張と期待の中、初めて迎えた初走行のスタートで、発進からわずか数メートルのところで、スリップからハイサイドを起こし、車両が宙を舞った。幸いにも、ライダーの水谷氏に怪我はなく、車両の損傷も軽度なものであったため、車両を修理しレースへ復帰することを目指す。レース4日目、修理を終えたEV-01Aはレースに復帰しボンネビルを再び走行する。記録は157km/h、瞬間的な最高速度は203km/hに留まった。国内での走行テストで改善されていた横揺れがボンネビルで再発し、危険と判断したライダーは、それ以上スロットルを開けることはできなかった。

2度目のBMST出場。牙をむく自然を前に、全開走行叶わず(2017)

ほろ苦いデビューとなった2016を胸に、11月、BMST2017に向けてEV-01Aの更なる改良を開始。課題は、EV-01Aから継続している横揺れとスタートでの操作性の向上の2点である。コントロール性に対して、電子クラッチ・システムを考案し、実機でのトライを経て採用を決定する。横揺れに対しては、マスの集中化とバネ下重量の軽量化を狙い、モータの搭載位置をリヤタイヤの両サイドからフレーム内部へと移動する。こうして、特徴であったモータ直結によるダイレクト駆動をやめ、チェーン駆動となったEV-01Zが完成した。

2017年8月、BMST2017に出場。EV-01Zは5日間のレースを長い待ち時間に耐えながら、毎日走り続けた。だが、大会を通じた最速記録は247.8km/h、瞬間的な最高速度は251.5km/hにて大会を終えることとなった。この年のBMSTのコースは、路面が荒れていてリヤサスペンションを搭載しないEV-01Zは車体が跳ねてしまい、速度を伸ばすことはできなかった。フロントサスペンションを現地調達し、セッティングに奔走したものの、最後まで全開で走らせることは叶わず終わりを迎えた。

2017年9月、国内では全長1.5kmのテストコースが、走行できる最も長いコースであるが、その距離ではEV-01Zの実力が設計通りであるのかを検証することはできない。そこで、BMST2017の1週間後に開催予定であり、コロラドにある民間空港の滑走路で開催されるThe COLORADO Mileへの出場権を獲得し、1,000kmの距離を移動した。1mile(約1.6km)のアスファルト舗装の加速区間で、EV-01Zは本来のポテンシャルを発揮し、303.2km/hの電動バイククラスの最速記録を樹立した。

The COLORADO Mileで最速記録を残したが、目標はあくまでBMSTで世界最高速を樹立すること。BMST2017での課題、荒れた路面でも全開走行を可能にすることと横揺れの課題解決に向けて動き出す。

2018-世界最高速を記録した2019までの軌跡は第二弾で公開 <to be continued>

Profile

EVバイク(EV-02A)
FIM/AMA認定
世界最高記録樹立329km/h
「ボンネビル・モーターサイクル・スピード・トライアル2019」にて、電動バイククラスの世界最速記録を樹立。エントリーした電動バイク車重300kg以上のクラスレコードを樹立するだけでなく、FIM/AMA(※)が認定する電動バイク全クラスのレコードを超える世界最速の電動バイクとなった。(※FIM:国際モーターサイクリズム連盟、AMA:全米モーターサイクル協会)

【車両スペック】
車体サイズ(全長×全幅×高さ):2360mm×689mm×1120mm
車体重量:338kg
外装:CFRP(ドライカーボン)
フレーム:パイプフレーム構造
     メインフレーム:炭素鋼鋼管(STKM11A)、スイングアーム:アルミ(7N01)
ホイール:アクティブ ゲイルスピード TYPE-GP
フロントフォーク:SUZUKI GSX1300R(オクムラチューニング)
リアショック:アクティブ ハイパープロ ツインショック
モータ:YASA-750(ブラシレス3相PMモータ)2基
モータコントローラ:SEVCON SIZE10 2基
バッテリ:リチウムイオン電池
(セル:日立マクセル、モジュール:マイクロ・ビークル・ラボ)