【PROJECT STORY】VRプロジェクト「時速329kmを体感せよ」

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3D CADをはじめとするデジタルデータにまつわる技術サービスに取り組むデジタルエンジニアリング事業。更なるデジタルデータの活用法としてVRに注目し、新たな技術サービス創出の第一歩としてVR技術へのチャレンジをスタート。ここでは、VRプロジェクトの取り組みをご紹介します。

Index

VRプロジェクト
2018ー2021

― はじめに ―

長年、自動車分野の開発で培った高度なデジタル技術を活かし、当社のパワートレイン・ワイヤーハーネス事業に続く、第三の柱としてデジタルエンジニアリングが存在する。これまで3Dモデリング・3Dスキャン・リバースエンジニアリング等、3D CADをはじめとするデジタルデータにまつわる技術サービスに取り組んできたが、更なるデジタルデータの活用法としてVR(バーチャルリアリティ技術)に注目。モビテックの強みを生かした新たな技術サービス創出の第一歩、そして、VR技術へのチャレンジとしてプロジェクトを発足した。
プロジェクトを通じて、VRの活用に必要なグラフィック制作・ハード技術・Unityのコーディング技術などを習得することで、時代の変化に即した付加価値の高い技術力の提供を目指す。

― コンセプト:時速329kmを体感せよ! ―

VRコンテンツのテーマとして、Bonneville Motorcycle Speed Trials 2019(※1)にてワールドレコードを樹立したEVバイクプロジェクト(※2)をテーマとして取り上げることにした。題して「時速329kmを体感せよ!」。日常では体感できない時速329kmで走行する世界を、視覚は勿論のこと、揺れや振動、スピード、加速度を体感できるようにすることで、リアルさを追求する。

(※1) アメリカユタ州にある広大な塩の平原“ボンネビル ソルトフラッツ”で開催される大会「Bonneville Motorcycle Speed Trials」のこと。毎年8月にバイクのスピードトライアルが開催される。世界各国から世界最速を目指すバイクがボンネビルに集結する。大会記録はFIM(国際モーターサイクリズム連盟)の公認記録となる。
(※2)社内プロジェクトのひとつ。2019年にワールドレコードを樹立した。

情報収集を経て、構想の具現化へ(2018-2019)

2018年プロジェクトを発足し、この年は展示会やセミナーに参加する等、VR技術に関する情報を収集。そして2019年、開発環境調査や手法検討、CADデータを活用したコンテンツ製作等、実現に向け構想を具現化していった。

<開発環境>
VRコンテンツのリアリティは、高解像度で高い描画性能が必要不可欠である。特に描画性能が低い場合、自分の動きと視界の動きにずれが生じてしまい、「VR酔い」と呼ばれる船酔いの様な状態に陥ってしまう恐れもあるからだ。そのため、HMDの描画性能に適した高性能なグラフィックボードを搭載する必要がある。当社では検討の結果、NVIDIA社が定めた「VR Ready」と呼ばれる認証を参考にしてPCのスペックを設定。開発を進めるためのアプリケーションは「Unity」を使用することとした。

今回のテーマの主役となるEVバイクに関しては、弊社がEVバイクプロジェクトの車両開発で実際に使用した3D CADデータを流用。ただし、Unityに3D CADデータを取り込む場合、CADデータ形式のままでは取り込むことができないため、3D CADデータを変換して利用した。
また、Unityには「Asset store」と呼ばれるデータ販売プラットフォームが備わっており、世界中のクリエイターが作成した高品質な3D CGデータを無料、または有償で簡単に利用することができる。当社では今回、背景データや演出に利用するデータ等を購入し利用している。

視覚、振動、スピード体感を実現(2020)

2020年度上半期の活動としては、時速329kmを体感するために下記3つの課題実現に取り組んだ。

①【課題】視覚的に体感
【要件】無限に続くマップを徐々に加速しながら走行

バイクが時速数百km/hで走る世界をVR上に実現させるためには、とても長く真っすぐな直線コースを作らなければならない。その分、広範囲なマップが必要なため描画処理の負荷が高くなったことで、画面の動作性が悪くなり、リアルさに欠けていた。そこで、処理軽減のためにあまり重要でない場所のポリゴン数を下げたり、実際に表示される範囲以外は描画しない設定にする等、様々な手法を検討し、スムーズな動きを可能にした。

②【課題】揺れ、振動を体感
【要件】走行状態に合わせてコントローラを振動させる

走行状態に合わせてコントローラを振動させることにより、走行時の揺れや振動を体感させることができた。今後は、コントローラの治具設計を行い、トリガーをひくとVR上で動き出したり、加速度が変化する仕組みを実現させる予定だ。

③【課題】スピードを体感
【要件】走行スピードに応じた風を送る

コンテンツ内の走行スピードに応じた風をサーキュレータでユーザーに吹き付けることで、体感スピードを実現した。今後、サーキュレータのモーター制御を行うことで、速度に応じた風量をユーザーに吹き付け、体感スピードのリアルさを追求していく。

上記の通り、視覚・振動・スピードを体感するための仕組みを構築してきた。リアルさ追求のため、改良箇所はあるものの、ソフト面は完成に近づいている。

VRコンテンツ完成、社内外へ公開(2021)

コロナ禍による活動自粛の他、開発環境を構築する中でアプリケーションの調査や利用規約の読解等により時間を取られたことで計画に遅れが出ていたが、ソフト面の精度を高めると共に、ハード面の設計を強化し、モビテック初のVRコンテンツを完成させた。完成したVRコンテンツのシステム構成は以下の通りである。

VRコンテンツを体験する際には、実際の大会で使用したEVバイクの車体に乗車し体験する。とはいえ、車体の中は空っぽの状態にし、自立して乗車できるように再設計している。車体の再設計には実際のEVバイク開発者にも参加してもらい、こだわりのあるコンテンツに仕上げることができた。

コンテンツとしてこだわった部分は以下の3点。
①【実物に乗車できる】EVバイクのボディーを再利用している
②【実物と同じ操作ができる】スロットル操作で加速する
③【風と振動を感じられる】車体から風が吹き出す/ハンドルが振動する

VRでよりリアルな体験をするには、自身の体勢や動作、それによるフィードバックを受けることが重要とされる。今回のコンテンツでは、なるべく簡単な方法で、よりリアルでインタラクティブな体験を実現できるよう工夫しており、社内で開催した体験会でも好評を得ることができた。加えて、これまでの活動成果の発表機会として、2021年4月に開催された「第6回 名古屋設計・製造ソリューション展」へ出展し、当社の取り組みを社外へアピールした。

但し、このプロジェクトは展示会出展がゴールではない。
冒頭に記載した通り、プロジェクトを通して、デジタルエンジニアリング業務の新たな技術領域となる「VR技術」を習得することで、既存技術に加え新たな付加価値の提供を目指している。技術力はモビテックの強みであり、その強みに一層の磨きをかけるため、常に新しい知識や技術の習得に励み続けていく。

Profile

VRプロジェクト
2018ー2021
【概要】ユーザーはEVバイクに跨り、ヘッドマウントディスプレイ(以下、HMD)を装着してコントローラのトリガーを引くことで、HMDで表示しているバーチャル空間の中でEVバイクの走行を体感する。