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長年の開発で培った知見を活かし、新たなフィールドを開拓。
入社以来、約13年に渡り、オートマチックトランスミッションにおけるトルクコンバータ(※1)の開発に携わってきました。近年、自動車業界ではハイブリッド化や電動化に向けた取り組みが進み、トランスミッションを構成している部品も変化しています。その状況下において、培った経験や知識を活かすフィールドの開拓を任せてもらったことを機に、新たな取り組みとしてNV解析の部署を立ち上げました。
なぜNV解析なのか。NVとは、「Noise(ノイズ)」と「Vibration(バイブレーション)」の頭文字をとったもので、ノイズは騒音、バイブレーションは振動を意味します。私がこれまで開発に携わってきたトルクコンバータには、エンジンの振動を吸収するダンパという部品が含まれています。そのため、トルクコンバータの開発をする上で培った振動に関する知見を、NV解析に活かせると考えたことが、部署立上げの大きなきっかけとなりました。
私たちが行うNV解析は、騒音や振動を定量的に数値化していく仕事です。製品の騒音や振動をひろい、解析を行う中で、部品をどのように変えたら騒音や振動が変化するかを検証していく。解析結果をもとに、騒音や振動の原因を改善することで、製品の付加価値を高める役割を担っています。
(※1)トルクコンバータ:エンジンの出力をトランスミッションに伝達、遮断する流体クラッチ、かつエンジントルクを増幅させる動力伝達装置
学生時代に学んだ解析や数学・物理・振動工学が活きてくる。
仕事内容としては、大きく2 つのフェーズに分かれます。
まず、振動や騒音データの測定です。一例ですが、測定方法としては、自動車に音を検知するためのマイクや揺れを検知する加速度計を取りつけ、実際にテストコースを走り、データを取得します。欲しい音・振動のデータがどこで検知できるのか。正しく検知するためには、製品の構造や物理的な動きを理解する必要があります。
次に、検知した数値の解析です。解析する上で、必要となる計算の中身を理解しないといけないのですが、とにかく多くの数式を用いるので、覚えるのも大変です。難度の高い計算が多いため、数式が好きな人にとっては、得意分野を仕事にできる環境だと思います。
技術職の場合、仕事をする上で会社独自のルールや手法を覚えることが多いのですが、NV解析の仕事は、原理原則に基づいて業務を進めていくため、学校で学んだ解析や数学、物理、振動工学等の分野が活きてきます。これらの分野が得意な方は、早く業務に馴染めるかもしれませんね。
様々な解析手法の中から、目的に合わせて最適な手法を選択。
解析には、いろいろな手法があります。例えば、モード解析では、部品の振動し易い周波数や挙動を分析し、伝達経路解析(TPA)では、どの部位の揺れが一番の主要因になっているのかを分析します。その他、周波数解析(FFT解析)では、どういった周波数帯の振動がおきているのか、振動の強弱を色別に表したカラーマップを見ながら探していきます。そうすることで、複数の原因が組み合わさった波形を分解し、個別に調べることができるのです。その他にも、さまざまな解析手法がありますが、目的に合わせて最適な手法を選択し、解析を進めます。
個人的にこの仕事の魅力は、音や振動といった感覚的なものを数値化でき、原因を解明することだと思っています。カラーマップで振動をビジュアルでとらえ、振動の要因を突き止め、対策を講じていく。実際に振動が収まり騒音が消えると、自分の解析が正解だったとはっきりと分かるので、仕事のやりがいにも繋がります。
設計部署と連携体制を整え、事業をより発展させていきたい。
騒音・振動は、『モノが動く』上で必ず発生する課題です。そのため、水素自動車や電気自動車の開発増加といった開発車両の変化はもちろんのこと、家電や航空業界等の異業界へ応用することも可能です。
ただ、NV解析は、あくまで製品開発を行う上での手段の一つです。今後は当社の設計部署と連携をとりながら、お客様の要望に幅広く応える体制を整えることで、事業をより発展させていきたいと考えています。