2019/07/31 3Dスキャン・リバースエンジニアリング
お客様から「ベンチマークを目的に、他社製品のリバースエンジニアリングを行い、CAE解析による強度/剛性を調べたい。解析自体は自社でやるので解析メッシュの作成までをお願いしたい」とのご依頼を最近特に受けます。
そこでCAE解析を目的にしたリバースエンジニアリングによるデータつくり込みレベルについて少しお話をさせていただきます。
どこまで詳細を調べたいのか?(味見程度で良いのか?、設計者が扱うCADソフトを使用した解析レベルで良いのか?、CAE専任者が扱う専門ソフトを使用した解析レベルで良いのか?)によって、弊社ではアウトプットするリバースエンジニアリングデータを変えています。
勿論、アウトプットするデータ品質レベルを変える理由はそればかりではありませんが、理由の一つでもあります。
ベンチマークを行うタイミングは、お客様の製品開発スケジュールの上流工程にあり、且つ、ベンチマーク調査期間も余り取れないのが現実だと思います。
弊社では大手自動車部品メーカー様の中で設計を長年経験してきた技術者が、弊社に帰任してリバースエンジニアリングを行っていますので、開発の流れや設計/CAE解析を熟知しています。
例えば、味見程度でよいのであればオートサーフェスレベルの3Dデータで良いと思われがちですが、全てがオートサーフェス面ではCAE解析結果が異なってきます。
スキャナの性能/性質から3Dスキャンで再現できない所はどこかを理解しており、3D CADデータを使った場合の解析結果を熟知していないと、相違に気が付けないケースです。
原因として、3Dスキャンで再現できない所が解析条件に大きく影響するにも関わらず、データを編集せずにアウトプットしてしまっている点があります。
※「CAE解析におけるリバースエンジニアリングデータのつくり込みレベル」掲載(2019/2/19掲載)。
解析結果は、大抵は作成する解析メッシュに左右されます。
その解析メッシュの元になるのは、リバースエンジニアリングによって作成された3Dデータです。
ノウハウなのでここでは詳しく記載できませんが、解析メッシュを作成する際、非常に細かな設定が必要となってきます。
お客様が扱うCADソフトやCAE解析ソフト、使用されるPCのスペックに合わせた解析メッシュを仕上げる必要性もあります。
オートサーフェスデータは、一枚一枚の面が凹凸であり、境界線定義ができない為にメッシュの細かな設定ができない事があります。
また、オートサーフェス面作成の元になっているSTLデータは、点群データを変換している特性上、角部や極小の隅R部などの再現性が悪く、形状がダレていたりノイズを含んだデータであるなどの理由から、解析を行う場合は十分な注意が必要だと考えています。
凹凸面や形状ダレがあるために、荷重条件を与えると力が逃げてしまい、応力分布の結果が異なってくるのです。
「物に忠実な面であるからそれで良いのでは」と考えがちですが、そのオートサーフェス面の元になっているSTLデータの素性や解析ソフトの計算内容を理解した上での「手直し」が必要になります。
下図はあくまでも一例ですが、オートサーフェスを使った場合は、部分的に一部のデータをつくり込んでいます。
一例・・・
しかしながら、形状や条件、解析の種類などからオートサーフェスでもよい場合もあります。
弊社ではお客様とよく協議させていただいた上で、アウトプットレベルを決定しております。
その他にもお客様ご自身が、CADソフトで解析を行う場合、そのCADソフト上で解析メッシュを作成されることが主流です。
その場合、弊社ではリバースエンジニアリングデータのみをご提供させていただいております。
一般的にですが、ご依頼いただくリバースエンジニアリングデータの作成レベルは下図のフルリバースモデルが多いです。
フルリバースモデルは作成するのに相当な工数を要します。
しかし、解析メッシュの細かな設定等をしやすいメリットがあります。
その後のデータの使い方を考えるとメリットが大きいと言えます。
CAEは解析ソフトさえあればできるというものではありません。
長年のノウハウと設計スキルが必要となってきます。