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モビテックブログ

2017/09/11 EVバイクプロジェクト

EVバイクプロジェクト~vol.52 Bonneville Motorcycle Speed Trials 2017(その10)~

皆さん、こんにちは。
技術企画Gの河合です。

今回の記事が現地レポートの最終回となります。

前回までのレポートにて、BMST2017の結果及びその後コロラドマイルへの参加検討はお伝えしていましたが、コロラドマイルに参加する事が出来ましたので、そのエントリーからレース結果に至るまでを紹介します!

まずは、レース出場に向けたエントリーと車両の修復・セットアップの模様です。
エントリーにおいてはインターネットからUSマイルレースに登録した後、コロラドマイルへの出場手続きを行います。

ボンネビルからロッキー山脈を越えて、コロラド・デンバーシティに移動した後、ホテルにチェックインするも早々にパソコンを開きます。ライダーやマシンの情報を次々と打ち込んでいきますが、コロラドマイルの出場手続きが最後の所で完了する事が出来ません。何が駄目なのかもわからず、その日は時間も遅かった為、問い合わせをすることも出来ずに諦めます。

しかし、我々には心強い助っ人がいます。その方々は、KillaJoule(キラジュール)というボンネビルに参加しているレーシングチームの方々です。そのチームのドライバーはEvaさんという女性ドライバーで旦那さんのBillさんと共にマシンを作り上げ参加されています。我々と同じボンネビルでは数少ない電気を動力とするマシンでの参戦という事もあり、視察に行った3年前からアドバイスを貰ったり互いに情報交換をさせて貰っています。

また、EvaさんとBillさんはコロラドに住んでおり、更にはBillさんは過去にコロラドマイルのスタッフをされていた経歴もあります。その事を知っていた我々はボンネビルでのBMST大会期間中に彼らに我々がコロラドマイルに参加するかもしれない事を伝えており、その際に「エントリー等で困ったら何でも協力してあげるよ」とのとても有り難い言葉を頂いていました。実際にエントリーがうまく出来ない状況となった為、デンバーシティ到着の翌日に連絡をとりEvaさんとBillさんの御自宅を訪問させて頂きました。Evaさんにサポートして貰いながら、Evaさんの自宅のPCにてエントリーが完了です。

そして、もう一つEvaさん達にお願いしていた事がありました。自宅訪問前にエントリーのサポートと合わせて、車両修復の協力をお願いしていたのです。
修復の内容ですが、実はボンネビルでのBMSTにてアッパーカウルのスクリーンを清掃した際、現地で購入したブレーキクリーナーを用いてしまい、スクリーンを曇らせてしまっていたのです。曇ったスクリーン越しでは前方の視界を確保する事が出来ず、BMSTではスクリーンを避けてスクリーンの横からヘルメット越しに前方を視認していました。
この状態では不安定でもあり、空力的にも当然良くはありません。そこで曇ったスクリーンを修復すべく、研磨剤等で曇りを除去できないかと相談していたのですが、Evaさん達は我々の想像を超えた修理を施してくれました。まず我々のスクリーンを外し、その形状を型紙を使ってトレースし、KillaJouleのマシンのスクリーンに使用しているポリカーボネイト製の板材から同じ形状のものを作成し、スクリーンそのものを交換してくれたのです。
もはや修理ではなく、カスタムと言っても過言ではありません。しかも、その作業を自宅のガレージでわずか1時間程度で終わらせてしまいます。自宅のガレージの工具や機材も非常に充実しており、その技量の秀逸さに我々は改めて感服した瞬間でした。

EV1 EV2

その後、ホテルに戻り、ライディングポジションをボンネビル仕様からコロラドマイル仕様に変更します。また、ボンネビルでノーマルフロントサスに交換しましたが、コロラドマイルでは滑走路(アスファルト)の為、元々装着していた強化フロントサスに戻さなければいけないのですが、その作業はBMST最終日にコロラドマイル参加に向けて実施済みです。

そして、この日もう一つ有り難い出来事がありました。EvaさんとBillさんの自宅での作業中にCasey(KC)さんというコロラドマイルの常連さんを紹介してくれたのです。そして、我々のマシンが曲がる事が困難でスタートやコースアウトにサポートが必要である事をCaseyさんに伝えると、Caseyさんがコロラドマイルスタッフのコース責任者に連絡をとり、事情を説明してくれます。更には大会初日の早朝には、前日夜勤だったにも関わらず、我々に合流し車検や登録のサポートから大会中の立ち廻り、コロラドマイルでのノウハウ等を教えて頂きました。

次にいよいよコロラドマイルのレース模様です。
大会初日は、まずは受付での登録、その後車検です。Caseyさんのサポートもあり難なく終わり、さっそく車両を準備して1本目の走行に臨みます。

EV3 EV4

出力は、ボンネビル最終日と同様にバッテリーフル充電+電流制限UPのまま走ります。
ボンネビルではこの設定ではグリップが負けてしまい、まともにアクセルを開ける事が出来ませんでしたが、コロラドマイルでは舗装路面である為問題ないだろうとの判断です。

但し、初めて走るコースでもあり、また初出場である事から165mph(265km/h)の速度規制を強いられている為、様子を見ながら走らせます。0.75mile地点で速度規制の解除条件145mph(233km/h)をオーバー、その後スロットルを戻し1mile地点では約130mph(209km/h)程度に落とし、更に減速してコースアウト。速度規制を1段階UP可能かと思いきや、1mile地点でパスしていないと駄目との事で、そのまま連続で2本目を走ります。

今度は、1mile地点を163mph(262km/h)でパスし、無事に速度規制をUPします。ここで一旦休憩をとり、車両のチェックと充電です。2本目のトライにてスロットル全開であるのに加速が伸びていない事から、更に電流制限を引き上げます。この段階で国内でのシャーシダイナモ評価での最大値まで引き上げる事になります。
充電に時間がかかる事もあり、3本目の走行は午後からとなります。スタートから全開で加速するも記録は175.9mph(283.0km/h)。走行終了後データをチェックし、バッテリーやモータ、インバータの温度に問題ない事を確認し更に制限UP&充電。初日最後となる4本目に臨みます。
シャーシダイナモでも城里実走テストでも試していない領域に突入です。予測(希望)としては3本目よりも+10km/h程度。しかしながら4本目の記録は178.5mph(287.2km/h)。予測の半分以下しか車速は延びていません。
充電に要する時間と初日の初コース、初走行という環境での緊張と疲労からこの日のレースはここで終了とします。翌日のレースに備え、充電とセッティング変更を実施しますが、4本目の走行においても各部の温度には余裕が見られる為、再度電流制限を引き上げます。既に、電流制限はバッテリー単体評価における電流値を超過して使用している事になります。

そして、大会2日目。
前日の走行データを解析しての電流制限の引き上げ、更に空力性能のUPを狙いフロントの車高を下げます。そして、2日目の1本目、大会通算5本目となる走行に臨みます。初日の4本の走行でコロラドマイルでの走行にも慣れてはきたものの、右肩上がりに出力を上げている車両は、発進時に繊細なスロットルワークを要求します。スタートしてから10m程進んだところで、更に加速しようとスロットルを開けた瞬間、白煙を上げながらタイヤがスリップし、車両は2回、3回とスネークします。ライダーの水谷さん、スタートでサポートしている我々、大会スタッフ、観客誰もがヒヤリとした光景でした。昨年のボンネビルでのアクシデントも脳裏をよぎります。

しかし、水谷さんの秀逸なスロットルワークで見事にグリップを回復したリヤタイヤはそこから凄まじい加速を見せます。1/2mile地点-134.3mph(216.1km/h)、3/4mile地点-166.4mph(267.7km/h)、1mile地点-185.7mph(298.8km/h)!!300km/hまであと1.2km/h!!

走行後は、パドックに車両を戻し、データの確認です。
引き上げた電流制限によってどこまで各部の温度が上がっているか即座にチェックします。大丈夫、問題なし。チームの誰もが、300km/hを何としても超えたいと一致団結して次なる手を施します。充電は今まで以上に限界まで行い、空力対策にてカウルの隙間をテープで塞いでいきます。モーターやインバータの温度はバッテリーよりも更に余裕がある事から、冷却用のダクトもテープで塞ぎ、少しでも空力が良くなる様に対策を施します。
前回の走行で発進後の加速でスリップしてしまう程のパワー、且つバッテリー電流もとうに限界を超えていることから、電流制限の更なる引き上げは危険と判断し、現状維持とします。

そしてこの日2本目、大会通算6本目の走行に全ての希望をかけて臨みます。
スタートは慎重なスロットルワークにて1本目の様なスリップもなく加速していきます。
1/2mile地点-126.1mph(202.9km/h)・・・「1本目よりも少し低い、頑張れッ!」、3/4mile地点-166.1mph(267.3km/h)・・・「1本目に追いついた、もっと延びろッ!」、1mile地点-188.4mph(303.1km/h)・・・「ヨッシャー!300km/h超えたーー!!」。

EV5 EV6

3度目の挑戦にてようやく、一つの結果をつかむ事が出来ました。
「コロラドマイルでの300km/h超過」
挑戦の度に課題が山積みとなり、その度にプロジェクトメンバー全員で検討し、情報収集の為に東北~九州まで駆け回り、対策の為に協力企業様にはタイトなスケジュールを無理を聞いて貰い、現地においては初対面の言葉もろくに話せない我々の為に沢山の方が惜しみない協力/サポートをして頂き、この成果に繋がったと改めて実感しています。

それらの何れか一つでも欠けていたら、この結果は無かったのではないでしょうか。
改めて、このプロジェクトに関わる全ての方々に感謝の想いを込めて、この場を借りて御礼を申し上げたいと思います。
「本当に、有難う御座いました。」

EV7

EVバイクプロジェクトの3度目の挑戦は、これにて終了です。
ですが、我々の“挑戦”は、まだ終わりではありません。
今回の結果は一つの成果ではありますが、本来の目標である「ボンネビルでEVバイクでの最高速記録の樹立」は達成出来ていません。
今回の挑戦にて、その達成に向けての課題や改良点がより具体的になったと同時に、その難しさを改めて実感しています。来年、再度挑戦出来る様に、また新たに取り組みを始めて行きたいと思います。

最後に長文にも拘らず、最後まで御読み頂いて有難う御座います。

We will be back again USA in NEXT YEAR!
Special thanks everyone for all your support!
Let’s meet all of you again!

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